サックス奏法における腹式呼吸③

では、いよいよサックスを吹く状態においての腹式呼吸についてお伝えします。

腹式呼吸はヨガ、ダイエット、瞑想など様々の分野で取り入れられており
ごく一般的な呼吸法ですが、サックス奏法においての腹式呼吸が有効である理由や目的は別にあります。

当然、サックス奏法においてどの様に有効であって、
どの様にブレスをすべきかという目的を考えなければなりません。

考える

サックスの音を発生させる資源として「息」を捉えた時に、
一定に安定した質の良い息を常に供給できた方が良いわけです。

息を「吐く」→「吸う」→「吐く」→「吸う」→…

というサイクルをなるべく無理なく自然な状態で行うことは、
より自然な音楽を産む事が可能になります。

逆に不自然な呼吸サイクルから、
上質な音楽を奏でられるというのは考えられません。

サックス奏法として、ブレスを考えるにあたって
まずは、自然に吸って自然に吐くという呼吸サイクルを大前提にすべきです。

サイクル

ブレスとは、「息を吸う」という行為と「息を吐く」という行為の繰返しである訳ですが、
それらがサックスを吹くという行動にどういった意味を持つのかを考えていきたいと思います。

そこで、ブレスを考えるにあたって

  1. 息を吸うこと
  2. 息を吐くこと

この2点を分けて考える必要があります。

これまで話してきた腹式呼吸がサックス奏法において有効であるのは

1、たくさんの息を吸えること
2、吸った息をコントロールして吐けること

この2点にあります。

1の「たくさんの息を吸えること」については「息を吸う」行為
2の「吸った息をコントロールして吐く」については「息を吐く」行為

となります。

最初に「息を吸うこと」について考えてみましょう。

サックスの音の源は、息であるという事はこれまでの話で説明をしてきた通りです。

車でいうところのガソリンとなる訳ですが、
息というのは呼吸サイクルの循環によって供給されるもので、
肺の中で息を溜めておけるものではありません。

当然、息の吸う量が少ないと安定して供給できる息がありませんので
より多くの息を吸い、その息を効率良く利用するという循環が理想です。

サックス奏法において、腹式呼吸が有効なのは、
横隔膜がさがり、平になることによって
肺に入る息の量をより多く確保できることにあります。

広がる

もし、腹式呼吸が出来ていても、息を吸う量が少ないと意味がないので
サックス奏法におけるブレスの注意点のひとつ目は、たくさんの息を吸うこととなります。

初級者の場合は、そもそもたくさん息を吸うという行動自体が
非日常の行動になるので、息をたくさん吸うという事自体を意識をしないとできません。

普段、自然にしている呼吸とサックス奏法における呼吸が異なる点は
息の吸うタイミングやブレスにかける時間が不自然である、という事です。

音楽では、フレーズの間や音楽の流れに合わせてブレスをする事が多く、
非常に短い時間でたくさんの息を吸う必要があります。

非常に短い時間でたくさん息を吸う行動は、かなり不自然な行動になるため
多くの人が身体に力が入ったり、不自然な呼吸になる可能性が高いです。

サックス奏法における腹式呼吸が難しいところは、
これらのことによって不自然な状態での呼吸サイクルになってしまう事にあります。

もし、息を吸うタイミングが少なく、非常に短い時間で大量の息を
吸わないといけないとしても、ごく自然な呼吸サイクルを行う必要があります。

サックス奏法における腹式呼吸の誤解の中に、
「息はお腹に入れる」「お腹を膨らませる」などがありますが、
本来は息は肺にしか入らないし、横隔膜が下がってお腹が膨らむのも
ごく自然な腹式呼吸をした結果であって、わざとお腹を膨らませるものではありません。

どんなに短時間でブレスを行わなければならないとしても
息をどこに入れるのか、などはまったく意識せずに、
また、無理矢理、息を大量に吸い込むのでもなく、ごく自然な状態で腹式呼吸を行います。

では、どうやってごく自然な状態で、
かつ効率的に息をたくさん吸うことができるのか、

それが、吐く事の反動で呼吸をするという事です。

これは前回の記事でお伝えした内容です。

前回の記事

単純な話、人間は呼吸しなければ生きていけません。
体内に息がなくなればその反動で、人間は勝手に息を吸います。

つまり、吸うことに意識をするのではなく、
しっかりと吐き切るという事を意識する事で、
短時間でたくさんの息を自然な状態で吸うことができます。

サックス奏法における注意点の二つ目は
息を吐き切った反動の力で、自然な状態で息を吸うという事です。

では、次に「息を吐くこと」について考えていきます。

サックス奏法において腹式呼吸が有効であるのは
吸った息をコントロールして吐けることであるとお伝えしました。

吸った息をコントロールする、とはどういう事なのか、
という事を解説していきたいと思います。

息を吐くという行為において
通常の呼吸とサックスを吹いている時の大きな違いは
息の出口の大きさにあります。

例えば、通常の呼吸で鼻で呼吸している時と、
口で呼吸している時では息の出口の大きさが違いますね。

口を大きく空けて呼吸をしている場合は、一気に息は出ていきますが
口を閉じ、鼻から息が出ていく場合は、
口から出ていく場合に比べて長い時間がかかって息が出ていきます。

サックスを吹く場合は、息の出口(マウスピース)の大きさが限られているため
外に出ようとする息がせき止められている状態になっています。

これは、ダムの放流をイメージすると良いと思います。

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ここで重要なのは、出口の大きさが限られているために
出ていこうとする息に一定の圧力がかかっていることです。

サックスの音は、リードの振動によって音が鳴る仕組みのため、
良い状態の音を鳴らすためには、適切な圧力の息を
マウスピースへ流し込む必要があります。

この適切な圧力というのが、
今後のサックス奏法においてもかなり重要なキーワードになります。

適切というのは、バランスがとれたという意味になるのですが、
出したい音によって、丁度よいバランスが異なってきます。

例えば、大きな音と小さい音では、適切な圧力が異なります。
高い音と低い音でも、適切な圧力が異なります。
出したい音のニュアンスによっても適切な圧力は変わってくると思います。

そして、この圧力を調整する要素が3つあります。

1、息の量
2、息のスピード
3、出口の大きさ(アンブシュアの状態)

この3つのバランスが変わることによって
息の圧力が変化するのは、なんとなくわかると思います。

例えば、同じ息の量であれば息のスピードが速い方が圧力が高い。
同じ息のスピードであれば、出口の大きさが狭い方が圧力が高い。

それぞれの音に応じた適切な息の圧力を供給するためには
上手くこの3つのバランスを調整する必要があります。

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例えば、サックスの構造上、キーの開け閉めによって
管体の長さが変化していますね。

低音であれば、管は長く。高音であれば管の長さは短くなります。

低い音を出そうとした時は、管が長くなるため
高い音に比べて相対的に息の量が必要になってきます。

しっかりとリードを振動させるにあたって、適切な息の圧力を得るためには、
その息の量に対してどれくらいの息のスピードがバランスが良いのか
また、アンブシュアの状態はどの様に調整するのが適切か、
という様にこの3つの要素を相対的なバランスで調整する必要があります。

この3つのバランスを上手く取って、
出したい音に最適な圧力の息をマウスピースに流し込むというのが、
サックス奏法における重要なテクニックになります。

実際には、「息はこれくらいのスピードでこのくらいの量で…」と考えて
バランスを取っているというよりかは、基礎練習やエチュードなどを練習する事によって、
それらの調整を感覚的に身につけるといった方が近いと思います。

サックス奏法において、腹式呼吸が重要な意味を持つのは
この3つの要素を上手く調整できる状態にある呼吸法が腹式呼吸であるからです。

「調整できる状態にある」という言葉が重要で
あくまで腹式呼吸は、これらの調整をするための土台を提供しているイメージです。

逆にいうと、しっかり腹式呼吸ができていないと
これら3つの要素を上手く調整できないということです。

では、土台というのはどういうことなのか。

呼吸というのは、吸う時も吐く時も常に変化を伴っており、
止まっていることのない行動です。

「吸う」→「吐く」→「吸う」→「吐く」…

呼吸は、このサイクルの繰返しになるわけですが、
この「吸う」や「吐く」という個別の動作を観察したときも
連続している変化である事がわかると思います。

風船をイメージすると分かりやすいと思います。

風船に空気を入れる時も風船から空気が出ていく時も
常に風船の状態は変化を伴っていると思います。

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息を吐くときというのは、
空気が入っている風船の口を手で摘み、その手を離した状態に似ています。
風船の中に入っていた空気は、一気に外に出ようとします。

それは、空気圧が高いところから低いところへ息が流れ込む原理で
何もコントロールしなければ、吸った息は一気に外へ出ようとします。

一気に外に出てしまっては、圧力の調整ができないので
上手くコントロールをしながら、息を吐くという事になります。

決して、息が外に出ようとするエネルギーに反するものではないので
お腹の周りの筋肉を力を入れて固めてしまうのではなく
自然な状態で息を吐いていきます。当然、膨らんだお腹は凹んでいきます。

ただ、一気に外へ出ていくエネルギーを
ゆるやかに出ていく様に上手くコントロールします。

解剖学的にいえば、横隔膜が平になった状態から一気にドーム型に戻るのではなく
ゆるやかに戻っていく事を指しています。

そのために必要なのは、丹田と呼ばれる下腹部に重心を持っておく事

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そして、息を吐くと横隔膜が上がるにつれて
重心も上へ移動するエネルギーが働くので、
その重心を下へ引っ張るイメージを持つ事です。

イメージとしては、自分の力で重心を下へ引っ張るのではなく
丹田の位置から重い鉄アレイをぶら下げている感覚を持ちます。

このイメージを持つことで、
急激に横隔膜が戻ることはなくゆるやかに戻っていきます。

横隔膜がゆっくり戻り、
身体の重心を下へ維持しているため上半身が自由になり、
息の圧力を調整する余裕が生まれます。

これが腹式呼吸が息の圧力を調整するために土台として機能している状態です。

なぜ、腹式呼吸をするのか、という目的をしっかり把握していないと
腹式呼吸をすること自体が目的になってしまうので注意しましょう。

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