01何かに見立てるということ

前回は、川上さんの問診をヒントに音の味わい方をご紹介させて頂きました。

今回は、前回行った味わい方をもとにどうやったら音楽表現に活かせるかを考えていきたいと思います。ところで、あなたは、楽曲を表現するときにどういう手順でその曲にふさわしい表現を考えますか?

曲に表現をつける考え方はいろいろとあるんですがもっともイメージをつかみやすい方法は、音として捉えるのではなく「何かに見立てる」ということです。そもそも音楽というのは、1オクターブの中に12個の音がありその12個の音をつかって、様々な世界を見立てて表現するものです。夏を感じさせる曲、冬を感じさせる曲、太陽を感じさせる曲、夜空を感じさせる曲・・・。あなたもいろいろと聴いてきたと思います。人々が音楽に心惹かれるのは作曲者が見立てをして曲を作っているからですね。

02音楽表現に活かそう

僕たちが音楽を聴くときも音の現象そのものを聴くことは皆無に等しく、作曲者が意図した世界観を視聴者が独自の観点で見立てをしているからこそ、音楽を聴くことで、わくわくしたり、感動できるわけです。

前回、音の味わい方は、以下のことをやってみました。

  • ・自分の出している音を自分なりに言葉で表現してくれませんか?例えば、ドーンとするとか。
    ・その音を形にするとしたら、どんな感じですか?
    ・また、その形に色があるとしたら、どんな色でしょうか?
    ・自分の音が声を出すとしたら、何って言ってますか?

つまり、これって見立てなんですね。前回はご自身の音をどう感じるのかを味わってみたのですがこの方法は曲の表現にも応用ができます。今度は、ご自身の音ではなく、その曲がもつモチーフやフレーズをこれらの方法で見立てるわけです。ただ、例えば夏をイメージして吹くというのは、大雑把すぎ。視聴者としてであれば、それでいいですが、表現者として、その見立てをもっとリアルに見立てをするべきです。

そこで有効なのは、川上さんの質問です。前回は、「痛み」を「自分の音」に変えて質問に答えてもらいましたが今回は、「痛み」を「その曲に相応しい音(フレーズ)」と変えて質問に答えてください。

  • ・その曲に相応しい音(フレーズ)を自分なりに言葉で表現してくれませんか?例えば、ドーンとするとか。
    ・その曲に相応しい音(フレーズ)を形にするとしたら、どんな感じですか?
    ・また、その形に色があるとしたら、どんな色でしょうか?
    ・その曲に相応しい音(フレーズ)が声を出すとしたら、何って言ってますか?

どうでしょう?これらの質問に答えることで作曲者が意図した見立てを垣間見ることができるのではないでしょうか?後は、前回に行った「自分の音」の質問の答えと「その曲に相応しい音(フレーズ)」の質問の答えの差を埋めていくこの作業が必要になります。自分自身の音をしっかりと味わう(見立てる)ことによりスタート地点を見出すことが出来、曲の表現を味わう(見立てる)ことによりゴール地点がわかります。

これらを音、モチーフ、フレーズ、セクション、曲全体の単位で細かく細かく味わう(見立て)をしていきましょう。表現するというと、何をやったらいいのかわからない。誰も教えてくれない。というのが、本音だと思いますが表現方法を考えるきっかけが見つかれば幸いです。