01替え指を使う理由は二つある
前回までの運指の解説で、すべての音域をカバーしました。これですべての運指を解説したのですが、サックスには替え指というのが存在しています。替え指とは、前回までにお伝えした基本の運指とは別の運指でしかし、同じ音程の音が出るというものです。変え指を使う理由は2つあります。
- 1、フレーズを吹くにあたって、より簡単な指の動きをするため
2、より正確な音程を得るため
02簡単な指の動きをするため
例えば、「ファ♯(ソ♭)」はふたつ運指がある事は、前回までの記事でご紹介しました。この様な動きであれば、5番のキーを使う運指で良いです。
ただ、下記の様な半音階の動きは、TFを使う運指の方が効果的です。
このふたつの違いはわかりますか?もし、下記の半音階の動きを5番の運指を使うとした場合、その前の音が「ファ」であるため、右手は4番を押さえています。その次に「ファ♯」を押さえるためには、その4番を離して、5番を押さえますね。この指の動きをクロスフィンガリングと言います。
人差し指と中指が交差します。この指の動きは、指の動きがスムーズではないため出来れば回避したい運指です。そこで「ファ♯」を「TF」のキーを使う事により回避する事ができます。この様に前後の音の関係でこっちの運指を使った方が運指的に楽というがあり同じ音でも運指を使い分けることがあります。
すべての運指に替え指が存在している訳ではないですができる運指は活用した方がよいわけです。運指を覚えたての頃は、複数覚えるのが面倒くさい、または、慣れている運指を使う方が楽である、という理由でひとつの運指しか使わない人がいますが、まったくナンセンスです。
こういった運指の動きは、テンポが上がって速く指を動かさないといけない場合に効果を発揮します。最初から替え指を使い、指の動きに慣れておくことで最短での上達が可能です。指の構造上、簡単な運指があるのに慣れや怠慢で自分で指を動きを難しくしているのです。最初から替え指はある前提で運指は覚えましょう。では、代表的な運指を紹介します。
「ド」
シ+TCで「ド」の音が鳴ります。どういった時にこの運指を使うのかというとシのトリルです。
トリルというのは、その音とその上の音を交互に素早く反復させる装飾音のひとつです。ここでは、「シドシドシドシドシドシド〜」と吹きます。
この時にシの指は固定しておいて、TCを押したり、離したりするだけで簡単にトリルが可能になります。こちらもクロスフィンガリングを回避するためですね。ちなみに、TC、TF、TAの「T」とはトリルの意味を指します。
次に「レ」。
こういった音の並びの場合に「レ」をド+C2を押さえます。もちろんオクターブキーは外したままです。真ん中の「ド」から「レ」は、運指の変化が大きいところですね。もし、通常の運指を使用した場合は、2のみ→oct 1 2 3 4 5 6という動きをしなければなりませんが、替え指を使うと非常に楽です。
ただ、音色感や若干の音程が異なるので、ゆっくりな音の動きであれば通常の運指を使う場合もあります。この様に前後の指の関係で通常の運指とは異なる運指を使うとスムーズに指を動かせる可能性があります。フレーズによってどの運指を使えば良いのか、しっかりと考えてみてください。
03正確な音程を得るため
サックスは、実は吹けば確実に正確な音程が鳴る楽器ではありません。ピアノであれば、鍵盤を押せば正確な音程を得る事ができますがサックスの場合は、正確な音程で吹けるか否かは最終的には奏者に委ねられています。そこで音程の補正を行うわけですがサックスの奏法上ではふたつの方法があります。ひとつは口で補正する方法と、替え指を使って音程を補正する方法です。
今回は、替え指についてのみお伝えします。同じ音でも管体の穴をより塞ぐことで音程は低くなります。同じ音でも管体の穴をより開くことで音程は高くなります。例えば、真ん中の「レ」。
この音は、サックスの構造的に音程が高くなりやすい音です。もし、音が高い場合は、真ん中の「レ」の運指にプラスしてテーブルキーのBを押さえることで音程が低めに補正されます。次は、高く音程が補正させるバージョンを紹介します。
真ん中の「ド」
真ん中の「ド」が低くなる場合は、「ド」にプラスしてTAのキーを押します。そうすると音程が高くなります。運指を覚える時にも、管体の長さによって音程が変わっていくという話を説明しましたが、この運指による音程の補正は、その音程が変わらないという前提で、影響を受けないキーを開閉する事により若干、音程に変化があるという事です。
より閉じれば、音程は低くなります。より開けば、音程は高くなります。初級者であれば、音程など気にせずにまずは音をしっかり出すという事を目標に練習してほしいです。しかし、替え指は、どんな場合に使用するのか、という事だけ頭の片隅にも置いておいてください。いつか役に立つと思います。