基礎中の基礎

音が出る様になったら、ロングトーンに挑戦してみましょう。ロングトーンとは、その名の通り長い音を吹くことです。サックスの基礎トレーニングの基本の「き」でありどんなに上達しても必ず行うトレーニングのひとつです。

やっている事は、ごくごく単純でひとつの音を伸ばすだけです。やることは、ひとつの音をただ伸ばすだけですがこの練習はかなり奥が深いのです。習熟度によって、同じ事をしていても練習内容や意識していることも全く違うので自分のレベルにあった目標を持ち、常に目的を意識して練習する必要があります。つまり、何も考えずに音を伸ばしているのはロングトーンとは言いません。

では、そもそもロングトーンとは何のためにやっているのでしょう?それは、ざっくり言うと音作りです。いい音で吹きたいというのは、すべてのサックス奏者の願いであります。サックスを始めてわかるのが、音を出すのは簡単だけどいい音で吹くことが難しいという事です。

例えば、曲を演奏する時にあなたはどれくらい良い音で吹く事を意識して演奏していますか?リズムの事、音楽の事、運指の事、様々な事を考えながら演奏しなければならない状況でいい音で吹く事について意識しているのは、恐らく数%もないでしょう。曲を演奏していると良い音で吹くという事だけに集中する事はできません。だからこそ、音の事だけを考え、音について向き合う時間がロングトーンなのです。

ロングトーンで腹式呼吸、アンブシュア、身体の感覚や使い方などに向き合いそれらを考えなくてもできる領域をだんだんと増やしていくことでいい音を維持したまま曲を吹ける様になってきます。また、スポーツのウォーミングアップの様にアンブシュアの状態や腹式呼吸の感覚、また、リードの状態やその日の身体の状態などをしっかりと毎日、チェックするためにもロングトーンは習慣にしましょう。

ロングトーンをしていないと、知らず知らずのうちに変な奏法のクセがついたり、よい音で吹くという身体の感覚がズレてしまいます。このことから、初心者からプロに関わらずすべてのサックス奏者は、ロングトーンをして自分の音を見つめ直すのです。各記事に記載している腹式呼吸やアンブシュアについて細かく意識しながらロングトーンを行いましょう。

最終的には腹式呼吸やアンブシュア以外にも身体の状態や身体の使い方、音の発音や音の終わり方、音量や音色のコントロール、楽器の状態にも意識してロングトーンをしていきますがただ、いきなりすべてを意識できませんから長い時間をかけて、意識できる幅を広げていく、という感覚です。

同じ行為をしていても、練習内容や意識しているポイントが違うというのは、こういう事です。では、さっそくロングトーンをやってみましょう。「ひとつの音を伸ばす」この事をできるだけ丁寧に行うこと。これがロングトーンの大前提です。では、入門時には、どんな事を意識してロングトーンをすれば良いでしょう?

入門時に意識するロングトーン

入門時に意識することは、この二つです。

  • ・大きな音で吹く
    ・まっすぐ伸ばす。

これだけです。このふたつの条件を、最低音から最高音まですべての音で吹ける様にしてください。サックスを吹いてみるとわかるのですが中音域の音は比較的、音が出しやすいのですが低音域の音が思ったタイミングで出なかったり高音域の音が当たらなかったりします。

まずは、すべての音がしっかりと鳴る、という事を目標にロングトーンをしてほしいと思います。最初は拍数などは意識せずにただ音を伸ばす。という事で良いと思います。意識をすべき2つのことについて、それぞれ言及していきましょう。

1、大きな音で吹く

これは、腹式呼吸の記事のところでも書きましたが、サックス奏法において「息」というのは、音の源ですべての奏法を支えるガソリンみたいなものです。

初級者の方は、非常にブレスが浅い方が多い。つまり、息を吸うという事ができていないのです。ブレスが浅ければ車にガソリンがないのと同じですべての奏法が成立たないので、まずはしっかりと息を吸う、という事を身につけてほしいのです。

そのためにする事が「大きな音で吹く」という事です。まずは、おもいっきり息を入れて開放的に音を出す、という事をしてください。また、大きな音で吹くというのは、単純に息をたくさん吸うという意味合いだけではなく心理的なブロックを取り除く効果もあると思います。周りに遠慮をしたり、目立つことに消極的な気持ち、自分の音に自信がないっていう心理ブロックって誰にでもあると思います。

また、環境的に大きな音を出せないところで小さい音で練習している場合(近所の苦情を気にしたり、練習している音を誰かに聞かれたくないetc)も、それがクセになってしまい、息を入れるという事を疎外してしまい、弱々しい音が標準になってしまいます。

息をしっかりと入れ、堂々とした強い音をまずは標準にしましょう。最初に大きい音の幅を広げておくことで、ダイナミクス(強弱)の幅も広がります。ただ、息の入れ過ぎにも注意しましょう。

息を入れ過ぎると音が裏返ったり、オーバーブロウになってしまうのでどこまで息を入れると音が裏返ってしまうのか、どこまで息を入れると音が割れてしまうのか、という事を体感で掴んでください。

最初は力が入っても構いません。ロングトーンを継続する中でだんだんと力を抜いて楽に吹けるようにしていけば良いです。

2、まっすぐ伸ばす

この事をもっと詳しくいうと

  • ・統一された音量で
    ・統一された音色で
    ・大根をイメージした音

大根

(↑実際の音の波形)

この一定に統一された音量・音色というのは意外と難しくアンブシュアが安定していなかったり、息がしっかり入っていないと音が揺れてしまいます。サックスを演奏するための口の筋肉は、サックスを吹くことでしか鍛えられないため、アンブシュアが安定するためにある程度の月日はかかります。

むしろ、初期段階はアンブシュアを安定させる筋肉をつけるためにロングトーンをしているので、音が揺れても焦らず継続してください。数ヶ月も継続すればアンブシュアも安定し、まっすぐな音を吹く事ができるでしょう。

初級者が「大きな音で吹く」「まっすぐ伸ばす」を意識してロングトーンをする事は、「腹式呼吸(ブレス)の習得」「心理ブロックからの解放」「アンブシュアの安定」この3つの効果をもたらすと考えています。

何も考えずにただ、長い音を吹くのがロングトーンではありません。しっかりと明確な目的を持ってロングトーンをしましょう。